木崎先生は、海洋学科の教授で探検部の顧問でもあり南極越冬隊の体長も2回された方。現在は退官され、南極やネパールなどの風景画を数多く描かれている。今回の油彩展は、タクラマカン砂漠周辺の砂漠と雪山がテーマだそうだ。前回までのものに比べると柔らかな感じの絵が多くなったような感じを受ける。それにしても80歳を越えながらも常に新たな作風を模索されているのには感心させられるなぁと思う。
これは尖峰と題されたパミールの風景画。この風景の絵は確か以前にも見た憶えがあるんだけど、それはもっとコントラストが強く、空も青空と雲がくっきりしていたような気がする。今回のものは、先にも書いたように柔らかなタッチと色づかいになっているのだけど、画面下を横切るの太陽に照らされたラインがとても印象的だと思う。
カイラス峰と題されたこの絵は逆にとてもコントラストが強いのだけどタッチは柔らかく描かれていて色合いがとてもいいなと思う。雲のカタチもとてもおもしろく全体として日本画的造形な印象も受ける。手前の太陽に照らされた暖かな緑と奥の雪山と空の冷たさの対比もいいなぁと思う。
写真は部分なので縦型になっているけど実物は横型なのでぜひ実物をご覧になっていただきたい。
この絵は空の色がとても素晴らしい。淡い薄紫のような色が微妙なグラデーションを作っていて見ていて飽きない。靄っているようにも見えるのは黄砂のせいかもしれないなぁ。題名は廃墟斜陽だと思うのだけど、額の下に貼ってある先生の地が達筆なのでちょっと定かじゃないけど。岩のようにも見える廃墟が柔らかな夕陽に照らされていて美しい画面を作り出している。とても私の写真ではこのよさを表現できないのでこれも、ぜひ会場で見て欲しいものの一つだ。
これは写真的というかカメラ的な感じのする作品。ピントを砂丘に立つ木にあてて手前の草むらをぼかしてある。砂丘と言うと白っぽい色をイメージするんだけど、灰色に見えるのは火山性の土質なんだろうか?タイトルが胡揚の立つ砂丘とあるので胡揚ってどんな木なんだろうと調べてみたら、タクラマカン砂漠の過酷な環境に適応したポプラの一種のことらしい。生きて1千年・枯れて1千年・朽ちるのに1千年と云われる程生命力の強い植物。枯れて砂漠に佇むその姿から「砂漠の聖」とも呼ばれているのだそうだ。この絵からするとまだこの胡揚は若いんだろうか?
右の色合いがとてもステキなこの絵の木も胡揚だそうだ。胡揚の秋景と題されているので紅葉しているんだろうか?それとも夕陽に照らされているんだろうか?空の青との対比も美しい。胡揚は、住宅や木製品として弓や木椀、漆器、木彫像や櫛などに使われていたらしい。
今回は、風紋が描かれた作品がいくつかあるのだけどその中でもこの砂丘と出された作品が一番素晴らしいのではないかと思う。かなり大きな作品で離れて見るとその良さがさらに際立っている。色彩的にも奥に向かって柔らかなピンクに変化し空の薄紫と地平線で溶けあっている。焦点は画面手前の二つの砂丘にあっていて、2つ目の右上がりの砂丘に力強さを感じる。目を上に向けると地平線が右下がりになっていて視線がそのまま画面にはない右に広がるであろう風景が目に浮かぶような感じだ。
これも大きな作品。羊群声無くと題されているけど画面からも音のない静かな世界を伺える気がする。砂漠地帯なので緑は少なくあるのは、土と岩と砂と空なのになんて豊かな色彩を感じることができるんだろう。それぞれにあたる光とそれぞれが作り出す影のコントラストがとてもいい。沸き立つようなとも、流れ落ちるドライアイスのようにも見える雪山とその後方の青空が冷たい空気を想像させるのだけど、のんびりと草を食む羊たちの群れにあたる陽があったかさを感じさせてくれる1枚だと思う。
他にも紹介したいものはいくつもあるのだけど、あとは会場で見て欲しいなと思う。この展覧会は4/22日の日曜日まで。
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木崎甲子郎油彩展 砂漠と雪山-タクラマカン砂漠周辺- 4/17(火)-4/22(日)
サロンドミツ
住所:〒900-0013 沖縄県那覇市 牧志 1-4-43 新川ビル4階 電話:098-862-7711 FAX:098-866-9221
営業:11:00-19:00 10:00-18:00(冬期)定休:月
料金:無料